透析中の「血圧低下」なぜ起こる?
皆さん、こんにちは。ベッドで透析を受けている最中に、急に機械のアラームが鳴り、「〇〇さん、血圧が下がっていますよ!」とスタッフが慌てて飛んできた……そんな経験はありませんか?
血圧が下がると、目の前が真っ暗になったり、冷や汗が出たり、気分が悪くなったりして、本当に辛くて怖いですよね。「また今日も血圧が下がるんじゃないか…」と、透析の時間が憂うつになってしまう患者さんも少なくありません。
今透析患者さんにとって一番身近で、かつ一番辛いトラブルとも言える「透析中の血圧低下」について、なぜ起こるのか、そして「どうすれば血圧を下げずに、楽に透析を終えられるのか」を、分かりやすくお話しします。
なぜ、透析中に血圧が下がるの?
透析中に血圧が下がる一番大きな原因は、体の中から急激に水分を抜くからです。
人間の血管を「水の流れるホース」だと想像してみてください。透析では、このホースの中から血液を取り出し、機械を通して余分な水分と老廃物を絞り出し、またホース(血管)へ戻しています。
透析と透析の間に増えた体重(水分)を、たった4時間ほどの間に一気に引くため、ホースの中の水分が急激に減ってしまいます。本来なら、血管の外側(細胞や皮膚の下など)にある水分が、減った分だけホースの中にジワジワと染み出してきて補充されるのですが、水分を引くスピードが早すぎると、この補充が間に合いません。
その結果、ホースの中が「水不足」のスカスカな状態になり、血圧がストンと落ちてしまうのです。
血圧低下の「危険なサイン」を見逃さないで!
血圧が下がりきる前に、体は必ず「SOSのサイン」を出しています。次のような症状が出たら、それは血圧が下がり始めている証拠かもしれません。
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あくびが出る(脳への血液が減り、酸素不足になっている初期サインです!)
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生あくび、ため息が出る
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急に暑く感じる、冷や汗が出る
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お腹が痛くなる、吐き気がする、便意をもよおす
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ふくらはぎがつる(こむら返り)
「ただ眠いだけかな?」「少し我慢すれば治るかな?」と思って黙っていると、一気に血圧が下がって意識を失ってしまうこともあります。「あくび」や「ちょっとした気分の悪さ」を感じたら、絶対に我慢せず、すぐに近くのスタッフに声をかけてください。 早めに対処すれば、辛い症状を未然に防ぐことができます。
血圧低下を防ぐ! 今日からできる4つの対策
透析中の血圧低下は、クリニックでの調整と、皆さんの普段の生活の工夫を合わせることで、しっかりと防ぐことができます。
【表:透析中の血圧低下を防ぐためのポイント】
| 対策のポイント | 具体的な理由・効果 | 私たち(クリニック)と一緒に確認すること |
| ① 体重の増え幅を少なくする | 引く水分の量が少なければ、血管の「水不足」は起きにくく、血圧も安定します。 | 前回のコラムでお話しした「塩分制限」を思い出し、無理のない水分管理をしましょう。 |
| ② ドライウェイト(DW)の見直し | ご飯を美味しく食べて「お肉(筋肉や脂肪)」がついた場合、目標体重(DW)を上げないと、必要以上に水分を引きすぎて血圧が下がります。 | 最近、食欲があって太ったかな?と思ったら、遠慮なく教えてください。DWを調整します。 |
| ③ 血圧のお薬を飲む時間の工夫 | 透析の前に血圧を下げるお薬を飲むと、透析の水分引きと合わさって、血圧が下がりすぎてしまうことがあります。 | 「透析の日の朝はお薬を飲まない」などの調整ができるか、医師にご相談ください。(※自己判断でやめるのは危険です!) |
| ④ 足元から血液を押し出す工夫 | 足に溜まった血液を心臓に戻すことで、血圧を保ちます。 | 透析中に足首をパタパタ動かしたり、弾性(着圧)ストッキングを履くのも効果的です。 |
「ご飯をしっかり食べている証拠」かもしれません
ここで一つ、皆さんに知っておいていただきたい最新の知識があります。
透析を長く続けていると、「体重が増えるのは悪いこと」と思い込んでしまう方が多いです。しかし、血圧が下がる原因の中には、「体調が良くて、しっかりご飯を食べられたから、純粋に体にお肉(脂肪や筋肉)がついた」という、大変素晴らしい理由が含まれていることあります。
本当は「実る体重(お肉)」が1キロ増えているのに、設定体重(ドライウェイト)が昔のままの場合、本来は体に必要な水分まで無理やり絞り取ってしまいます。これでは、血圧が下がるのも当然です。
「最近、食事が美味しくて、残さず食べているよ」という方は、それはとても喜ばしいことです。血圧が下がるのは、あなたの体が元気になってお肉がついたサインかもしれません。
さいごに:我慢は禁物。なんでもお話しください
透析中の4時間は、皆さんの大切な体をお預かりする時間です。その時間が苦痛なものになってしまうのは、私たちスタッフにとっても一番悲しいことです。
「忙しそうだから声をかけづらいな…」「あくびくらいで呼んだら申し訳ないな…」といった遠慮は一切いりません。些細なことでも構いませんので、体調の変化を感じたらすぐにお知らせください。
お薬の調整、目標体重の見直し、透析の機械の引き方の工夫など、私たち医療スタッフが持っているすべての知識を使って、あなたが「今日も楽に透析が終わったな」と笑顔で帰れるように全力でサポートいたします。一緒に、安全で快適な透析を目指していきましょう!
