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慢性糸球体腎炎と言われたことがあるという方へ

診察室でお話ししていると、「そういえば何年か前の健診で、糸球体腎炎と言われたことがあったわ。でも、痛くも痒くもないから、そのままにしちゃっているの」と教えてくださる患者さんがいらっしゃいます。

かつてその病名を告げられたことがあるのなら、あなたの腎臓は今、静かに助けを求めているかもしれません。

今回は腎臓専門医の視点から、この病気の正体と、なぜ「昔の診断」をそのままにしてはいけないのか、そして今からできる優しいケアについてお話しします。

糸球体(しきゅうたい)って、一体なに?

私たちの腰のあたりには、そら豆のような形をした「腎臓」が2つあります。血液の中のゴミをろ過してきれいにして、おしっこ(尿)として外に出す、体の中の優秀な「浄水器」のような働きをしています。

この浄水器の中には、顕微鏡でしか見えないほどのミクロの細い血管が、毛糸の玉のように丸く集まった「超高性能な網目フィルター」が無数に存在しています。このミクロのフィルターのことを、医学用語で「糸球体」と呼びます。

「慢性糸球体腎炎」とは、この大切なミクロのフィルターに、長い年月(慢性)をかけて、ボヤのような小さな火事(炎症)がジワジワと起こり続ける病気のことです。

なぜ、フィルターが火事になってしまうの?

「塩分を摂りすぎたから?」「お酒のせい?」とご自身を責める方がいらっしゃいますが、この病気は生活習慣の乱れが直接の引き金ではありません。

一番多い原因は、免疫のちょっとした勘違いです。

本来、私たちの体をバイ菌やウイルスから守ってくれるはずの「免疫」のシステムが、風邪などをきっかけに少しだけエラーを起こし、間違って自分の腎臓のフィルター(糸球体)を攻撃してしまうのです。(※日本人に一番多いのは「IgA腎症」というタイプです)

攻撃されたフィルターは少しずつ目詰まりを起こしたり、破れたりして、本来なら体の中に留めておくべき大切な「たんぱく質」や「赤血球(血)」がおしっこに漏れ出てしまいます。これが、健診で「尿たんぱく」や「尿潜血(目に見えない血尿)」として引っかけられる理由です。

痛くないからが一番の落とし穴です

この病気の最大の特徴であり、一番怖いところは、火事が起きていても、初期から中期までは痛みやだるさが全くない(無症状)ということです。

「昔言われたけれど、今は元気だから治ったのかな?」と思うかもしれませんが、慢性糸球体腎炎は自然に治ることは少なく、水面下でゆっくり、ゆっくりとフィルターを壊しながら進行していきます。

そして何年、何十年と経ってから、以下のような症状が現れ始めます。

  • 足のすねや顔が、指で押すと戻ってこないほど「むくむ」

  • 血圧がどんどん高くなる

  • 疲れやすくなる、息切れがする

これらの症状が出た時には、すでに腎臓の浄水器としての働きが半分以下に落ちてしまっているサインです。だからこそ、「過去に言われたことがある」という情報が、今のあなたを救う最大のカギになるのです。

昔と今は違う! 進歩した「最新の治療」

「もう昔のことだし、今さら遅いのでは…」と諦めないでください。

一昔前は「慢性糸球体腎炎は、いずれ透析になるのを待つしかない」と言われていた時代もありましたが、現在の最新医療では、素晴らしい治療法やお薬がたくさん開発されています。

当クリニックでは、まず以下の検査で「現在の火事の大きさ」を確認します。

検査の種類 何を調べているの? 結果からわかること
尿検査 おしっこの中の「たんぱく」や「血(赤血球)」の量 フィルターの破れ具合や、今まさに火事(炎症)が起きているかどうかがわかります。
血液検査 血液中のゴミ(クレアチニン)の量 腎臓が今、100点満点中何点くらい働いているか(eGFR)を計算します。
超音波検査 腎臓の「形」や「大きさ」 痛みのないエコー検査で、腎臓が萎縮(縮んで硬くなること)していないかを見ます。

もし今も病気が進行しているとわかれば、「腎臓の血管を守る特別なお薬(RA系阻害薬など)」や、最新の「おしっこから糖を出すことで腎臓を保護するお薬(SGLT2阻害薬)」などを使って、腎臓を長持ちさせることができます。また、専門の病院と連携して、根本的な火事を消す治療(扁桃腺の手術やステロイド治療)を行うこともあります。

あなたの腎臓を守るため、今日からできる3つのこと

医療の力だけでなく、毎日の生活のちょっとした工夫が、腎臓を助ける大きな力になります。

① 「血圧」の管理は最高のボディーガード

フィルターが傷ついている時に血圧が高いと、破れた網目にさらに強い水圧をかけることになり、一気に腎臓が壊れてしまいます。ご家庭で毎日血圧を測り、「125/75 mmHg 未満」を目指しましょう。

② 腎臓を休ませる「減塩」

塩分を摂りすぎると血圧が上がり、腎臓に大きな負担がかかります。お醤油は「かける」のではなく小皿に出して「つける」、お味噌汁の汁は残すなど、1日6g未満を目標に薄味を心がけましょう。

③ 「風邪」や「感染症」に気をつける

免疫の勘違いが原因の病気なので、風邪を引いたり、ノドを腫らしたり、インフルエンザなどにかかると、それに反応して腎臓の火事も一時的に燃え広がってしまいます。手洗い・うがいをしっかり行い、無理をせず体を休めることが、腎臓を守ることにつながります。

さいごに

「昔、慢性糸球体腎炎と言われたことがある」

その一言を思い出してくださったことは、本当に素晴らしいことです。それは決して怖いことではなく、これから先のあなたの健康を守るための、大切な「パスポート」を見つけたようなものです。

過去の診断をそのままにせず、まずは「今の自分の腎臓は何点くらいで頑張ってくれているのかな?」と、答え合わせをするつもりで私たちにご相談ください。

「お薬の量が増えるのは嫌だな」「食事の工夫が難しくて…」

そんなお悩みも、一人で抱え込まずにすべて私たちにお話しください。うぐいす内科クリニックは、あなたの今の生活に寄り添いながら、一緒に最善の道を探す伴走者です。

あなたの腎臓が、これからもずっと元気にあなたを支え続けてくれるように。

さあ、今日から一緒に、腎臓の今の状態を確認する第一歩を踏み出してみませんか?

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