多発性嚢胞腎と言われたら? ~腎臓の水風船と上手に付き合うために~
健康診断のエコー検査や、他のご病気でたまたまエコーやCT検査を受けた時に、医師から「(常染色体優性)多発性嚢胞腎ですね」と言われて、驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。
「多発性…?」「嚢胞…?」
聞き慣れない難しい漢字が並ぶ病名を告げられると、なんだかとても珍しい、怖い病気にかかってしまったのではないかと不安になってしまいますよね。
この病気は、病気の性質を正しく理解し、生活習慣を少し工夫することで、ご自身の腎臓を長く守っていくことができる病気です。また、最近ではお薬による治療も大きく進歩しています。
多発性嚢胞腎ってどんな状態?
私たちの腎臓は、腰のあたりに2つある、そら豆のような形をした臓器です。血液の中のゴミをろ過してきれいにして、おしっこ(尿)として外に出す、体の中の「高性能フィルター」の役割をしています。
「嚢胞(のうほう)」というのは、分かりやすく言うと「液体のたまった水風船」のことです。
多発性嚢胞腎は、この水風船が、両方の腎臓にポコポコとたくさんできてしまう病気です。
水風船が小さいうちは、特に問題はありません。しかし、長い年月をかけて水風船が少しずつ大きく膨らみ、数も増えていくと、本来の腎臓のフィルター部分をギューッと圧迫してしまいます。その結果、腎臓がうまく働けなくなってしまうのです。
【※知っておいていただきたい大切なこと】
ご高齢になってから「腎臓に嚢胞がいくつかあるね」と言われた場合、多くは「加齢による自然な変化(単純性嚢胞)」であり、病気ではないことがほとんどです。しかし、これが遺伝的な原因で両方の腎臓に無数にできてしまうのが「常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)」です。ご自身がどちらの状態なのか、まずは主治医にしっかり確認することが第一歩です。
どんな症状が出るの?
この病気も他の腎臓病と同じように、初期の段階では、痛みも苦しみも全くない(無症状)のが特徴です。そのため、大人になってから健康診断などで偶然見つかるケースが非常に多いのです。
しかし、水風船(嚢胞)が大きくなり、腎臓全体が腫れてくると、次のようなサインが出ることがあります。
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お腹が張る、ぽっこり出る(大きな水風船がお腹の中を占領するため)
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背中や腰、お腹が痛む、重苦しい
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血圧が高くなる(腎臓が圧迫されると、血圧を上げるホルモンが出てしまいます)
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血尿が出る(赤いおしっこや、検査で引っかかる目に見えない血尿)
「ただの食べすぎでお腹が出ているのかな?」と思っていたら、実は腎臓が大きくなっていた…ということも少なくありません。
気をつけたいもう一つのポイント
多発性嚢胞腎は、腎臓だけでなく、他の場所にも影響が出ることがある全身の病気です。特に気をつけたいのが以下の2つです。
| 気をつける場所 | どうなるの? | 私たちが行う対策 |
| 肝臓(かんぞう) | 腎臓と同じように、肝臓にも水風船(肝嚢胞)がたくさんできることがあります。 | エコー検査やCT検査で、腎臓と一緒に定期的にチェックします。 |
| 脳の血管 | 脳の血管の一部がプクッと膨らむ「脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)」ができやすいことがわかっています。 | 破裂するとくも膜下出血の原因になるため、脳のMRI検査(MRA)を定期的に受けていただくことを強くお勧めしています。 |
「腎臓の病気なのに、脳の検査?」と不思議に思われるかもしれませんが、あなたの命を守るための大切なステップなのです。
腎臓の水風船を大きくしないための4つのケア
昔は「多発性嚢胞腎には治療法がない」と言われていた時代もありました。しかし、現代の最新医療では、進行を遅らせる素晴らしい方法がわかっています!
① お水をたっぷり飲む
これが一番簡単で、一番大切なお薬代わりです。
実は、体の中の水分が足りなくなると、「バソプレシン」というホルモンが出ます。このホルモンは、腎臓の水風船を大きく育ててしまう働きを持っています。
ですから、喉が渇く前にこまめに水分を摂り、このホルモンを出さないようにすることが非常に重要です。1日に飲むお水の量の目安は、ご自身の状態に合わせて医師と相談して決めましょう。
② 血圧をしっかり下げる
血圧が高い状態が続くと、腎臓の血管が痛み、病気の進行が早まってしまいます。
目標は「家庭で測る血圧で 130/80 mmHg 未満」です。毎日、朝と夜に血圧を測る習慣をつけましょう。
③ 腎臓を助ける減塩
血圧を下げるためにも、腎臓への負担を減らすためにも、塩分を控えること(1日6g未満)が大切です。お出汁の旨味や、お酢の酸味を活用して、美味しく減塩を続けましょう。
④ 進行を抑える最新のお薬
現在では、水風船を大きくするホルモン(バソプレシン)の働きを直接ブロックして、腎臓が大きくなるのを防ぎ、働きが落ちるのをゆっくりにする画期的なお薬(サムスカなど)があります。
すべての患者さんに使えるわけではなく、おしっこの量が増える毎日5L 程度の水分摂取が必要などの注意点もありますが、条件が合えば大きな武器になります。
さいごに:あなたの大切な腎臓を守るチームです
「常染色体優性多発性嚢胞腎」は、生まれつきの体質(遺伝)が関係している病気です。「自分のせいではないか」「親からもらってしまったのか」「子どもに病気をあげてしまった」と、ご自身やご家族を責めてしまう方もいらっしゃいますが、決して誰のせいでもありません。
大切なのは、過去を悩むことではなく、今見つかったこの病気とどう向き合い、未来の腎臓をどう守っていくかです。
「お水をたくさん飲むのがしんどい」「お腹が張って苦しい」
どんな些細なことでも構いません。私たち、うぐいす内科クリニックのスタッフに何でもご相談ください。腎臓専門医として、であなたを支えていきます。
今日から一緒に、腎臓をいたわる新しい習慣を始めていきましょう!
