メニュー

透析中のお通じの悩み ~安全で優しい便通コントロール~

「最近、お通じが硬くてなかなか出ない」「トイレでいきむのが辛い」「出たり出なかったりを繰り返して、お腹が張って苦しい」など…。

診察室で、患者さんからこのようなお通じの悩みをよくお聞きします。

便の悩みは、恥ずかしくてなかなか周りの人に相談しづらいものですよね。しかし、透析を受けている患者さんの半数以上が便秘に悩んでいるというデータがあるほど、実は非常に身近で、そして、透析治療においてとても重要な問題なのです。

透析患者さんが便秘になりやすい理由と、市販薬の危険性、そして無理なくお通じを改善するコツについて分かりやすくお話しします。

なぜ透析をしていると、お通じが悪くなるの?

健康な方であれば、「便秘のときは、お水をたくさん飲んで、生野菜をしっかり食べましょう!」と言われます。しかし、透析患者さんはこの一般的な便秘対策ができないため、便秘になりやすい3つの大きな理由があります。

① 水分制限のため便がカチカチになる

便の約80%は水分でできています。透析患者さんは体重管理のために飲むお水の量を制限しているため、腸の中の水分も少なくなり、便がウサギのフンのように硬く、コロコロになりやすいのです。

② カリウム制限による食物繊維の不足

お通じを良くする立役者は、野菜や果物に含まれる食物繊維です。しかし、カリウムが高くなることを気にして野菜や果物を避けてしまうと、便のカサ(体積)が減ってしまい、腸がうまく動かなくなってしまいます。

③ 飲んでいるお薬の影響

透析患者さんの多くが飲んでいる「リンを下げるお薬(リン吸着薬)」や、「カリウムを下げるお薬」の中には、副作用として腸の動きをゆっくりにしてしまったり、便を硬くしてしまったりするものがあります。

便秘を放っておくと体にどんな危険があるの?

「たかが便秘でしょ?お腹が張るのを我慢すればいいだけ」と思うかもしれませんが、透析患者さんにとって便秘は命に関わることもあります。

まず、硬い便を出そうとトイレで強くイキむと、血圧が急激に跳ね上がります。これが血管に大きな負担をかけ、脳出血や心筋梗塞といった病気の引き金になることがあります。

また、以前のコラムでもお話ししましたが、「カリウムは便からも体の外へ捨てられている」という事実を思い出してください。便秘で何日も便が腸の中に留まると、一度便の中に出たカリウムが再び体の中に吸収されてしまい、危険な高カリウム血症を引き起こす原因になります。

【重要】市販の便秘薬の「自己判断」は絶対にNGです!

「病院で言うのも恥ずかしいから、薬局で便秘薬を買ってこよう」

ちょっと待ってください! これは非常に危険な行為です。

薬局で売られている一般的な便秘薬(酸化マグネシウムなど)には、マグネシウムという成分がたくさん含まれているものがあります。健康な腎臓であれば余分なマグネシウムはおしっこから出ますが、透析患者さんはこれが体の中にどんどん溜まってしまいます。

マグネシウムが溜まりすぎると、高マグネシウム血症という状態になり、血圧が急に下がったり、意識がぼんやりしたり、最悪の場合は心臓が止まってしまうこともあります。便秘のお薬は、必ず私たちクリニックの医師が処方した安全なものを飲んでください。

お家でできる! お腹に優しいお通じ改善の工夫

お水をガブ飲みせずに、自然なお通じを促すためのご自宅でできる工夫をご紹介します。

【表:水分に頼らない!お通じ改善のコツ】

工夫のポイント 具体的な方法 なぜ良いの?(効果)
① 野菜を食べて食物繊維を摂る 最近は、カリウムを強力に吸着して吸収を抑えてくれる薬があります。野菜と一緒に内服することで、食物繊維を摂取できます。 水分を増やさずに、便の材料となる食物繊維をしっかり確保できます。
② お腹の「の」の字マッサージ 仰向けに寝て、おへそを中心に時計回りに「の」の字を描くように、優しくお腹をさすります。 外からの適度な刺激が、動きの鈍くなった腸を優しく目覚めさせます。
③ 「オリゴ糖」を取り入れる お砂糖の代わりに、市販の「オリゴ糖(シロップ)」を大さじ1杯程度、お料理などに使います。 腸内にいる善玉菌(ビフィズス菌など)のエサになり、腸内環境を整えます。
④ 適度な運動(歩行など) 無理のない範囲で、家の周りを散歩したり、室内で足踏みをしたりします。 足腰を動かすことで腹筋が刺激され、腸の動きが活発になります。

最新の透析患者さんに優しい便秘薬があります

「食事やマッサージも頑張っているけれど、どうしてもスッキリ出ない」という方は、決してご自身を責めないでください。お薬の影響や年齢による腸の働きの低下は、努力だけでカバーしきれないことも多いのです。

現在は医療が進歩し、「マグネシウムを含まない、透析患者さんでも安全に飲める新しい便秘薬」がいくつも開発されています。

例えば、腸の中にだけ水分を集めて便を柔らかくするお薬や、腸の粘膜を刺激して自然な動きを引き出すお薬など、患者さんのお腹の状態に合わせて細かく選ぶことができます。

また、便を柔らかくするお薬と、腸を動かすお薬を上手に組み合わせることで、「無理にイキまなくても、ツルンと自然に出る」状態を作ることが目標です。

さいごに:恥ずかしがらずに、ぜひ教えてください

「便の調子はどうですか?」と聞かれるのは、少し恥ずかしいかもしれません。しかし、私たち医療スタッフにとって、皆さんのお通じの状態を知ることは、血液検査のデータと同じくらい大切な健康のバロメーターなのです。

「硬くて出にくい」「ウサギのフンのような便しか出ない」「薬を飲むと今度は下痢になってしまう」など、どんな些細なことでも構いません。あなたのお腹の痛みを和らげ、トイレでの負担をなくすために、一番合ったお薬と生活の工夫を一緒に見つけていきましょう。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME