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透析中のしつこい「かゆみ」 ~治療と毎日のスキンケア~

「背中や足がむずむずして、夜も眠れない」「かきむしってしまい、肌がボロボロになってしまった」……透析を受けている患者さんから、このような「かゆみ」の悩みを本当によくお聞きします。

実は、透析患者さんの約7割の方が、強いかゆみを感じていると言われています。「かゆみくらいで先生に言うのも…」と我慢してしまう方が多いのですが、かゆみによる睡眠不足やストレスは、皆さんの体力や生活の質(QOL)を大きく下げてしまう大敵です。

なぜ透析をしていると体が痒くなるのか、そして「しつこいかゆみを和らげるための最新の治療とご自宅での工夫」について、分かりやすくお話しします。

なぜ、透析をしていると「かゆみ」が出るの?

透析患者さんのかゆみは、虫刺されや一般的な湿疹とは原因が異なります。主に、次の3つの理由が複雑に絡み合って起こります。

① お肌の極度の「乾燥」

透析をしていると、汗をかく機能(汗腺)や皮脂の分泌が低下しやすくなります。さらに、透析で体の水分を引くため、お肌は常に「砂漠のようにカラカラ」な状態に。表面のバリア機能が壊れ、少し服がこすれただけでも強いかゆみを感じてしまいます。

② 「リン」や「老廃物」の蓄積

透析で取り切れなかった尿毒素(老廃物)や、食事から摂りすぎた「リン」や「カルシウム」が、皮膚の下に少しずつ溜まることがあります。これが皮膚の神経を刺激し、チクチクとした不快なかゆみを引き起こすのです。

③ 脳の「かゆみセンサー」の異常

ここが最も重要なポイントです。最新の医療研究により、透析患者さんは体の中のバランスが変化することで、脳にある「かゆみを感じるスイッチ(オピオイド受容体)」が過敏になっていることが分かりました。そのため、少しの刺激でも脳が「ものすごく痒い!」と勘違いして、強烈なかゆみのサインを出してしまうのです。

市販のかゆみ止めが「効きにくい」理由

「薬局でかゆみ止めの軟膏を買って塗ったけれど、全然良くならない」というご経験はありませんか?

一般的なかゆみ止め(抗ヒスタミン薬など)は、アレルギーなどが原因のかゆみにはよく効きます。しかし、透析患者さんのかゆみは、先ほどお話ししたように「乾燥」「リンの蓄積」「脳のセンサーの異常」が原因であるため、一般的な塗り薬や飲み薬だけでは効果が出にくいことが多いのです。

だからこそ、「治らないから」と諦めず、透析の専門的な視点での治療が必要になります。

ご自宅でできる! かゆみを和らげる毎日の工夫

かゆみ対策の基本は、何と言っても「毎日のスキンケア」と「お肌への刺激を減らすこと」です。ご家庭で今日からできる工夫を表にまとめました。

【表:お肌を守る!毎日の生活のコツ】

工夫のポイント 具体的な方法 なぜ良いの?(効果)
① お風呂は「ぬるめ」で お湯の温度は38〜39度くらいの少しぬるめに設定します。 熱いお湯は皮膚の脂(皮脂)を奪い、かゆみ神経を刺激してしまいます。
② ゴシゴシ洗いは厳禁! ナイロンタオルは避け、たっぷりの「泡」を手や柔らかい綿のタオルに乗せて優しく洗います。 摩擦はお肌のバリアを破壊します。汚れは「泡」だけで十分に落ちます。
③ お風呂上がりは「3分以内」に保湿 脱衣所に保湿剤(クリームやローション)を置いておき、体を拭いたらすぐに塗ります。 お風呂上がりは一番お肌が乾燥しやすい魔の時間です。早めの保湿が鍵です。
④ 肌着は「綿100%」を選ぶ 直接肌に触れる下着は、化繊(ポリエステルやヒートテックなど)を避け、綿素材を選びます。 化繊は静電気が起きやすく、チクチクとした刺激がかゆみの原因になります。

「リン」をコントロールすることも大切です

先ほどお話ししたように、血液中の「リン」が高くなると、かゆみが強くなります。

お肉やお魚にもリンは含まれていますが、特に注意したいのは「加工食品(ハム、ソーセージ、練り物、インスタント食品)」に含まれる「無機リン」です。これらは体への吸収率が非常に高く、かゆみを悪化させる原因になりやすいので、できるだけ控えるようにしましょう。

最新の「透析かゆみ専用のお薬」があります!

「スキンケアも頑張っているし、食事も気をつけているけれど、やっぱり痒い!」

そんな時は、迷わず私たちにご相談ください。

現在では、医療の進歩により、透析患者さん特有の「脳のかゆみセンサーの異常」を整える、画期的なお薬が登場しています。

飲み薬だけでなく、透析の終わりの回路から「注射」として入れるお薬もあり、ご自身でお薬を飲む手間を増やさずに、しつこいかゆみを劇的に改善できる方が増えています。

「かゆみは我慢するもの」「透析をしているから仕方ない」という時代は終わりました。

さいごに…:かきむしってしまう前に、お声がけを

かゆみで夜眠れないと、日中の透析も辛くなり、気持ちまで落ち込んでしまいますよね。お肌をかきむしって傷ができると、そこからバイ菌が入って重い感染症につながる危険もあります。

私たちは、皆さんの血液のデータだけでなく、「毎日の生活が快適に過ごせているか」を何より大切に考えています。

「最近、背中が痒くて眠れないんです」「自分に合った保湿剤や、新しいお薬について知りたい」など、どのようなことでも構いません。次回の診察や透析の際に、ご相談ください! 一緒にお肌の状態を確認し、あなたに一番合ったお薬や対策をご提案させていただきます。

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