健康診断で「中性脂肪」が気になったあなたへ
春や秋の健康診断の季節が過ぎ、お手元に届いた結果の用紙をじっくり眺めている方もいらっしゃるのではないでしょうか。その中で、多くの方が気になさる項目のひとつが「中性脂肪(トリグリセライド)」です。
「中性脂肪が高いと指摘されたけれど、痛くもかゆくもないから大丈夫だろう」
「年齢のせいだから仕方がない」
そんなふうに思っていませんか?実は、中性脂肪は私たちの体を守るための大切な「サイン」なのです。
そもそも、中性脂肪って悪者なの?
「脂肪」と聞くと、なんだか体に悪いもののように感じてしまいますよね。しかし、中性脂肪は決して「完全な悪者」ではありません。
中性脂肪は、私たちが活動するための「予備のエネルギー源」です。食事から摂ったエネルギーのうち、使い切れずに余った分が、いざという時のために皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられます。これが中性脂肪の正体です。
しかし、問題なのは「貯金しすぎている」状態です。エネルギーの摂りすぎや運動不足で中性脂肪が過剰になると、血液の中にドロドロと溢れ出してしまいます。
【中性脂肪の基準値】
| 検査項目 | 基準値 | 要注意(脂質異常症) |
| 中性脂肪(空腹時) | 149 mg/dL 以下 | 150 mg/dL 以上 |
※空腹時(食後10時間以上)の血液検査での数値です。
なぜ中性脂肪は高くなるのでしょうか?
高齢になってくると、若い頃と同じように食べているつもりでも、中性脂肪が高くなりやすくなります。その主な原因は以下の3つです。
基礎代謝の低下
年齢とともに筋肉量が減り、何もしなくても消費されるエネルギー(基礎代謝)が落ちてしまいます。そのため、若い頃と同じ食事量でも「エネルギーの余り」が出やすくなります。
糖質の摂りすぎ
中性脂肪を増やす一番の原因は、実はお肉の「あぶら」よりも、「糖質」です。ご飯やパン、麺類などの炭水化物や、甘いお菓子、そして「果物」の摂りすぎは、肝臓で中性脂肪に作り替えられてしまいます。
アルコールの飲みすぎ
お酒も肝臓での中性脂肪の合成を活発にしてしまいます。
中性脂肪が高いと何が怖いの?(医学的視点から)
「痛くもかゆくもないから」と放置していると、体の中では静かに、しかし確実に変化が起きています。
血管の老化(動脈硬化)が忍び寄る
中性脂肪が高い状態が続くと、血管の内側の壁に油の塊(プラーク)がへばりつき、血管が狭く、硬くなってしまいます。これが「動脈硬化」です。進行すると、ある日突然、心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる病気を引き起こす原因になります。
「超悪玉コレステロール」を増やしてしまう
最近の医学研究で分かってきた重要な事実があります。それは、中性脂肪が高いと、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が「小型化」してしまうということです。
これを「超悪玉コレステロール(スモールデンスLDL)」と呼びます。粒が小さいため、血管の壁の隙間にスルスルと入り込みやすく、通常の悪玉コレステロールよりもタチが悪いのです。中性脂肪を下げることは、この「超悪玉」を減らすことにも直結します。
肝臓がフォアグラ状態になる(脂肪肝)
余った中性脂肪は肝臓にも蓄積され、「脂肪肝」を引き起こします。近年、お酒を飲まない方の脂肪肝が、進行して肝硬変や肝臓がんになるリスクがあることが分かり、世界的な医学の課題となっています。
今日からできる!中性脂肪を下げる「3つの優しい習慣」
中性脂肪は、生活習慣を見直すことで比較的数値が下がりやすい項目でもあります。無理のない範囲で、以下の3つの習慣を取り入れてみましょう。
1. おやつの「糖質」を少しだけ見直す
毎日の食事をいきなり減らすのは大変です。まずは、間食や食後のデザートを見直してみましょう。
高齢の患者さんでよく見られるのが、「健康のために」と果物をたくさん食べているケースです。果物の糖分(果糖)は中性脂肪になりやすいため、「果物は1日に握りこぶし1つ分まで」を目安にしましょう。お茶請けのお饅頭やお煎餅も、量を半分にしてみることから始めてみてください。
2. 「青魚」を食卓の主役に
サバ、イワシ、サンマ、アジなどの青魚には、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)という良質な脂が含まれています。
数多くの医学論文でも、これらの成分が血液中の中性脂肪をサラサラに減らし、血管を若々しく保つ効果があることが証明されています。お刺身や焼き魚、手軽なサバ缶などを、週に数回は食卓に取り入れてみましょう。
【おすすめの食材リスト】
| 分類 | おすすめの食材 | 期待できる効果 |
| 青魚 | サバ、イワシ、アジ、サンマ | 中性脂肪を下げる、血液サラサラ |
| 海藻・きのこ | わかめ、ひじき、しいたけ | 糖や脂質の吸収を穏やかにする |
| 大豆製品 | 豆腐、納豆、豆乳 | 良質なタンパク質で基礎代謝を維持 |
3. 「プラス10分」のちょこっと運動
激しいスポーツをする必要はありません。「息が少しはずむけれど、笑顔でおしゃべりができる程度の運動」が最も効果的です。
普段のお買い物で少し遠回りをして歩く時間を増やしたり、テレビを見ながら足踏みをしたりするだけでも構いません。「今より1日10分多く体を動かす」ことを目標にしてみましょう。足腰を鍛えることは、転倒予防にもつながります。
おわりに ~いつでもご相談ください~
いかがでしたでしょうか。中性脂肪は、あなたの体が発している「少し生活を見直してね」という優しいメッセージです。
しかし、生活習慣の改善だけで数値が下がらない場合や、他の病気(糖尿病や甲状腺の病気など)が隠れている場合もあります。また、ご自身の今の血管の状態がどうなっているか不安に思われる方もいらっしゃるでしょう。
当クリニックでは、患者さん一人ひとりの生活スタイルや体質に合わせた、無理のない治療やアドバイスを行っております。健康診断の結果用紙をお持ちになって、ぜひお気軽に「うぐいす内科クリニック」へご相談にいらしてください。
いつまでも元気で、ご自身の足で歩き、美味しい食事を楽しめる毎日を、私たちと一緒に守っていきましょう。
